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あたまでっかち
あたまでっかち
下村 千秋
「赤い鳥」1935(昭和10)年2~4月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 17,773 字 · 36 页
一〇
冒険でした。が、林太郎はおっかさんに会いたい一心から、もうあぶないことも恐いことも忘れてしまったのでした。
一〇
林太郎はしろ公をつれ、土浦へむかって歩きだしました。左手は、松林や雑木林がつづいています。そこには、ひぐらし、みんみん、あぶらぜみなどがにぎやかにないています。右手は青々としたたんぼで、風がわたるたびに青い波がながれます。たんぼのむこうは霞ガ浦で、それは、いかにも夏の湖らしくきらきらと光っています。
林太郎は、生まれてはじめて歩く道ですが、そういう景色をながめながら歩いていると、そんなにさびしいとも感じませんでした。それに、土浦へいきさえすれば、おっかさんにあえると信じてもいるので。
ただ林太郎にとって少し困ったことは、しろ公をおともにつれてきたのに、しろ公はおともらしく神妙にしてついてこないことでした。しろ公もはじめて歩く道なので、いつものように横道へそれたり、見えなくなるほど先の方へ走っていったりはしませんが、道ばたにたっていつまでもくんくん、鼻をならしていたり、電信柱があるごとに、その根元へおしっこをかけたり、ほかの犬の姿をみつけると遠くからにらめていたり、ちっともおちついていないのです。