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いさましいはなし
いさましい話
山本 周五郎
「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页
――敦信が彼を抜擢したのは、財政を改革して、農地開拓と産業を興すことに目的があった。そのころ若くして家を継ぎ、多少でも野心のある藩主は、たいてい政治の改革に手をつけたものだ。
領主が一代主権の座にある封建制では、その主権が動かないため、いろいろの面に停滞と偏向が生ずる、しぜん代替りには改廃すべきものが少なくないのである。敦信はまだ世子でいたころから、農地の開拓と産業を興す計画をもっていた。そしてこれまでに腹心の者を交代で国許へ入れ情勢をみたうえ玄一郎をよこした。
――まず財政。歳出歳入の調整。
これが敦信の改革の第一着手であった。
「ここの人々は頑迷さというのではなく、安定を毀されるのが不愉快なのです」玄一郎は、こう云った。
「――現在の状態に触られたくない、このままそっとしていたいという気持なのですから、暫く私だけでじわじわ地取りをし、時をみて少しずつ人を入れたいと思うのです……いま江戸から人を殖やしますと、却ってかれらの不安を大きくし、団結して反対を致しかねません、その機微な点は軽くみてはならないと思います」
「おそらくそのとおりではあろうが」
敦信は頷いて、それからふと笑いながらこちらを見た。