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いさましいはなし

いさましい話

山本 周五郎

「講談雑誌増刊号」博文館、1950(昭和25)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,835 字 · 73 页

青空文庫

は了解を求めただけであるということだった。

列席している重臣の数と、その場の緊張した空気をみて、玄一郎はなにか起こったなと直感した。――上座の中央を避けて坐った益山税所は、いつもの煮えきらない暢びりした人に似合わずかなり貫禄のあるおちついた態度をみせていた。

「城代家老に代って問い糺すことがある」

益山税所はこうきりだした。

「そこもとは浪花屋の手代、嘉平なる者と昵懇であると聞くが、事実であるかどうか」

「――私には近づきはございません」

「浪花屋は大阪に本店のある材木商、当地はその出店であって、数年まえより御山の一手御用を願い出ておった、そこもとはさきごろから手代嘉平と往来し、旗亭などでしばしば会食するという、現にその場を見た者もあるのだが」

「――おそらく人違いでございましょう」

玄一郎はこう答えた。浪花屋などという店のあることも知らなかった。手代の名などはいま聞くのが初めてである、いったいなにを勘違いしているのかと思った。

「それでは済まぬのだ」

税所は手にした紙を膝に置きながら云った。

「――そこもとが手代と会食し、密談するようすを見た者がある、現にその証人がいるのだ」