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おごそかなかわき

おごそかな渇き

山本 周五郎

「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页

青空文庫

「なんでおれが隠れるんだ」竹中は酔った顔で、あぐらの片膝を叩いた、「隠れるってのは江戸幕府の目付がやかましかったからで、いまはおめえ、ちょっとした都市へゆけば、どこにだってチャーチの二つや三つはあるじゃねえか」

「おめえに学のあるのはわかってるが、その、チャーチとかなんとかいうのと、隠れキリシタンとはどういう関係があるだかい」

向うの席から力士のように大きくて、逞しい躯つきの男が立って来、二人の前に坐ると、白髪まじりの頬髭を掻きながら、めし茶碗を突きだして、そっちの徳利にあるほうの酒を呉れ、と云った。

「だめだ」と竹中啓吉が答えた、「これはおれが村長のところへ祝いに持って来たもんだ」

「今夜は村長んとこの祝いだろうが」と男はやり返した、「だとすれば、その酒はおらたち祝い客のもんじゃあねえか」

「それが油屋の親方の悪い癖だ」と竹中と話していた男が云った、「祝いの酒はみんなの持寄りだし、あとでこの家の者が集めてみんなに給仕をするだ、ちゃんとわかってるだくせに」

「そんなこたわかってら、おらが云いてえのは」と油屋の親方は眼をぎろりと動かした、がま蛙が虫を捜すような眼つきだった、「よそ者がもぐり込んで来て、宗旨もよくわからねえのに、こんな上座に坐って大きなつらをされちゃあ、おれみてえな地着きの者にゃあ肚がいえねえ、おめえ