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おごそかなかわき
おごそかな渇き
山本 周五郎
「朝日新聞日曜版」 1967(昭和42)年1月8日~2月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,042 字 · 71 页
彼は深い感動にうたれ、殆んど涙ぐましくさえなった。
このあいだに、りつ子は魚の一尾ずつの頭を石で叩いて殺し、焚火のまわりにある熱くなった石の上へ魚を並べた。魚というものは捕ったらすぐに殺しちまわないと、味がおちてしまうとか、いちばんうまく喰べるには、こうして熱くなった石の上で焼くのがいいのだとか、もし囲炉裏があるなら、竹串に刺して煉り焼きにするのがいちばんうまいのだとか、おとなびた口ぶりで話し続けながら、焼けてくる魚に塩を振りかけたり、幾たびも裏表を返したりした。
しみとおるように、すがすがしい山の空気と、高い流れの音を聞きながら、川にまだそんなに魚のいる、という感動にひたっていた。
――日本の近海から魚類がいなくなり、インド洋やアフリカや地中海まで漁撈にでかけなければならない。