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ぐうたらどうちゅうき

ぐうたら道中記

佐々木 邦

「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页

青空文庫

「僕に数理の観念がないとは聞き捨てにならないね。何か証拠があるのかい?」

とお父さんは不服を唱えた。

「あるさ。君は数理どころか数そのものゝ読み方さえ怪しいぜ。御希望ならこの場で証明して上げても宜い」

と団さんは確信のあるように言った。

「参考のため一つ願いたいもんだね」

「お安い御用さ。それじゃ、村岡君、十万円が十で何円だい?」

「百万円さ」

「百万円が十なら?」

「千万円さ。人を馬鹿にするなよ」

「千万円が十では?」

「一億万円さ」

「夫れ見給え」

「何だい? 千万円が十なら一億万円に相違ないじゃないか?」

「億万という単位はないよ」

「ふむ、一億円か? 占まったな! 一寸言い間違えたんだ」

「否、君は何時でも然う言っている。誤魔化しても駄目だ」

「僕に方角の観念がないという証拠があるなら見せて貰おうか?」

と三輪さんも団さんの手の明くのを待っていて苦情を持ち込んだ。誰でも自分のことは分らないと見える。

「君のは村岡君のよりも更に甚だしいぜ。君は去年の正月僕の家へ来てからその後一度も顔を見せないね?」

「そうさ。しかしそれは此処で度々会うからで、お互いじゃないか?」

「そんなことを訊いているのじゃない。