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ぐうたらどうちゅうき
ぐうたら道中記
佐々木 邦
「主婦之友」主婦之友社、1922(大正11)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 164,113 字 · 332 页
江藤さんの記念碑に着いた頃トボ/\日が暮れ始めた。殉死をした人、謀反をして斬られた人、妙に陰気なところが続く。
「旦那方は明日は川上へいらっしゃいますか?」
と男衆が訊いた。
「川上は好いところだと聞いているが、時間の都合が悪くてね」
と団さんが答えた。
「是非いらっしゃいませ。軌道車で一時間です。困難はござッせん。佐賀へお出になって川上を御覧にならなくてはお話になりませんぞ」
「何か見るものがあるかね?」
「水が綺麗で、風景が好くて、鮎の名所です。彼処のは鱗が金色で、あぎゃんした甘か鮎は日本国中何処にもなかと申します。焼いて柚の酢をかけてお上ったら頬が落ちますぞ」
お城の門まで行ったが、もう暗いので、壁に残った戦乱の弾痕は見えなかった。今度は夜景とあって、賑かな町筋へ引き返した。
「矢張り、昔からの都会だね。ナカ/\大きな店が並んでいる」
とお父さんが言えば、
「間口の広いのは地価の廉い証拠さ。しかし今の店のマルボーロは一寸綺麗だったね」
と団さんは貶したり褒めたりする。本屋で鍋島論語を尋ね当てゝ、
「三輪君」
とお父さんが振り返った時、僕達は三輪さんのいないのに気がついた。