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このこをのこして

この子を残して

永井 隆

「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页

青空文庫

ことも予想が立てられた。わが民族が、わが民族だけが生き残り、文化生活をするためには、今のうちにあの資源とあの資源とはぜひ手に入れておかねばならぬ。なるべくなら平和的に貿易で手に入れるのがいいが、武力に訴えてでも望みをとげておかぬと、わが民族は滅びる……というような先走った民族利己主義が、表面の理由は正義だのなんだのと称えているが、戦争を始めたものと思う。ところが戦争が始まってみると、予想以上に物を食う戦争となって、資源を手に入れるつもりだったのが、ごらんなさい、元も子もなくなって、お弁当箱のアルミニウムがない、台所に使うフライパンがない、石炭がない、電力がない、おまけにお金もなくなってしまったというざまだ。これも初めに言ったように、文化の力によって生活を豊かにする途をまだるっこいと斥けて、手っ取り早い武力のほうを選ぶ、わが民族の伝統の最後の結果だよ。戦争の最後のころ、私たち日本人はいわゆるじり貧におちいって、まったく絶望状態にあった。そこへピカドンと原子爆弾がはじけた次第だった。

「浦上天主堂」の挿絵

原子爆弾は人類に、まったく新しい資源の在ることを教えてくれた。