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このこをのこして
この子を残して
永井 隆
「この子を殘して」大日本雄辯会講談社、1948(昭和23)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 102,102 字 · 203 页
労働といえば筋肉労働が主だと大衆は考えている。そして腕をまくり上げていばっている。彼らは衆をたのんで、脳を汗する者の値打ちを引き下げようとする。しかし、あの焼け跡の地ならしをするときに痛く感じたろう、日本の労働者がもっことくわで、腕と肩と脚に汗を流して幾百人か働いていたが、そのまだるっこさに、いきなり一台のブルドーザーがやってきて、またたく間に地ならしを仕上げてしまったことを。
腕力が貴いなら熊は人間より偉い。肩の力が貴いなら人間は牛にかなわぬ。走れば馬に負け、鼻は犬ほども利かぬ。人間の人間たる貴さは知恵と自由意志とを持っていることだ。筋肉労働だけにしか価値をみとめない者の独裁とは、知恵と自由意志をそなえた人間にとって、なんと縁遠い言葉ではないか? 人間が人間らしい生活をするとは、この知恵と自由意志とを神の御意に従って正しく用いることだ。
人類が本能しか持たぬ動物と同じく、天然の資源を使い荒らしていた怠慢時代は過ぎたよ。あのピカドン一発で人類は居眠りを覚まされた。これから人類がその与えられた知恵と自由意志とを正しく用いて、隠された資源を次々探し出す時代になったのだ。