轻松读懂日语经典作品
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このにぎりめし
この握りめし
岸田 国士
「日光 第三巻第一号」1950(昭和25)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,649 字 · 27 页
「おれは、ゆうべは、たしかに参つた」
「将棋のことか?」
「いや、人生の勝負でだ。人間とはお前のことなのだ」
「おそろしくおだてるな。おれがいつたいなにをしたというんだ?」
「あの握り飯……おれはあんな握り飯がこの世の中に在ることを、すつかり忘れていたんだ」
「代用食の癖がついてるんだ」
「おれの頭は警察法規の活字でいつぱいだつた。たしかに、お前が、握りめしをといつた言葉は耳にはさんだ記憶がある。しかし、あの時、それがなんのことだか、さつぱり、ぴんと来なかつたんだ」
「おれの頭は蛙のように空つぽなんだ。飲むこと食うことばかり考えてる人間なんて、あんまり感心はできないよ。それより、お前は、およそ立派なお巡さんだ。いや、皮肉じやない。こうして、おれのところへ、そんなことを言いに来る奴が、ほかにいるかい。なんでもいゝ、おれは上州の生れじやないが、人間、人前であつさり兜が脱げるようなら、まずつき合えるとみてるよ。まして、よそう、もう警官のことを云々するのは、おい、そんなのおかしいよ、はなをかめ、はなを……」
増田健次は、岡本の顔をみていると晴れやかにほゝえむつもりで、涙が出て来たのである。