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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

蝋燭立、鉦、線香立、花立なども、安物だがひととおり揃っていた。しかし茂次はそれらの仏具をすっかりとりのけてしまった。ちょうど盛物を持って来たおりつが、それを見て不審そうに云った。

「それは源心寺のお住持さんが持って来てくれたんですけれど」

茂次は「みんな返してくれ」と云った。それからおりつの持っている盛物を受取り、自分で仏壇に供え、明日からは自分がするから、仏壇のことに手を出さないでくれ、と云った。

「若棟梁のお膳はいま持って来ます」とおりつが云った、「あっちはごたごたしてますからこちらであがって下さい」

茂次はふきげんに頷いた。

おりつになにか云われたのだろう、子供たちは静かにしていた。茂次の食事が終りかけたとき、正吉と松三が帰ったようすで、くろとこそこそ話すのが聞え、それから障子の向うへ来て、三人で朝の挨拶をした。茂次は茶を啜ると、すぐに立って外へ出た。

町内をぐるっと見てから、堀を越して白かね町、本町、一石橋のほうまでゆき、戻って来て福田屋へ寄った。まだ店はあいていず、住居のほうを覗くと、息子の利吉が庭を掃いていた。

「いまひと廻りして来たんだ」