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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

八

と云った。茂次は訝しそうに、おりつの顔を見た。おりつは赤くなって、菊二という子がいやらしいそぶりをすると話した。洗濯をしていると向うからみつめるし、干し物をするときなど腋の下を見たりするようである。朝早く、おりつが着替えをしているさいちゅうに「お早う」と云っていきなり障子をあけることもあるし、とにかくいつもどこからかおりつを見まもっており、それが子供らしい感じはなく、みだらなおとなの眼つきのように思える、というのであった。

「菊二っていうのはいちばん大きな子だな」と茂次が訊いた、「年は幾つだっけ」

「十一って云ってるけれど、本当は十二か三くらいになるんじゃないかと思うわ」

八

「十二か三だって」

「話を聞いてるとそうじゃないかと思うの、丑年の火事のことを知っていて、そのときおっ母さんと逃げた話をしたのよ、あの火事はいまから五年まえでしょ、そのとき八つだったって、口をすべらせたことがあるのよ」

「うん」と茂次は溜息をついた、「うちはどんな暮しをしていたんだ」

「おっ母さんが長患いをしていた、っていうことだけは聞いたけれど、ほかのことはなんにも云わないんです」

「もしそうだとすれば」