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ちいさこべ

ちいさこべ

山本 周五郎

「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页

青空文庫

四

そしてさっさとそこを去った。

帰ってゆくと、小屋のうしろの空地で、子供たちが遊んでい、茂次を見て、急にみんなしんとなった。みんな遊びをやめ、躯を固くして、じっと茂次のほうを見まもった。どの顔にも怖れと不安の色が、はっきりとあらわれていた。茂次は立停ってかれらを見た。大きいほうの子供たちは眼をそらし、じりじりとうしろへさがった。茂次がなおみつめていると、五つばかりになる男の子が、そばにいるもっと小さい女の子を抱きよせ、泣きべそのような笑顔をつくりながら、

「棟梁のおじさん」と呼びかけた。

「棟梁のおじさん、この子あっちゃんていうんだよ」

女の子を抱きよせた恰好が、まるで茂次からなにかされるのを防ぐようにみえたし、泣きべそよりみじめなつくり笑いは、殆んど正視するに耐えないものであった。彼は眼をそらし、戸口のほうへまわってゆくと、おりつが表を掃いていて、「お帰りなさい」と云った。

「ちょっと来てくれ」

と云って茂次はうちへはいった。

四

茂次の部屋で、おりつは話した。

大きな火事のあとには、多かれ少なかれ孤児ができる。親類や田舎のあるものはそっちへ引取られるが、他の者は救助小屋に集め、やがて元の町内に預けられる。