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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页
いつか茂次に呼びかけた子は、あのときのあっちゃんという女の子を、あのときと同じように抱きよせていた。
「五人逃げたというのは本当か」と茂次が訊いた、「どこかに隠れてるんじゃないのか」
すると十一か二くらいになる、いちばん年嵩の子が、「逃げたのだ」と答えた。
「じっ平と忠がみんなに逃げようと云ったんだ、じっ平も忠もかっぱらいなんかしたことがあるんで、それでおっかなくなったもんだから」とその子は云った、「――おらあよせってとめたんだけれど、とうとう三人付いていっちまったんだ」
茂次は頷いて云った、「安心しな、おめえたちみんな此処にいていいんだ、役人が許してくれたし、おれもこれから仲良しになるぜ、それから、ここにいるのはおゆうさんといって、みんなの世話を手伝ってくれる人だ」
「こんちは」とおゆうが頬笑みかけた、「あたしのこと姉さんって呼んでね」
「ねえちゃん」と小さなあっちゃんがすぐ呼び、赤くなって顔を隠した。おりつの眼尻がまたあがり、ついできゅっと唇を噛んだ。
大六が来たので、茂次は普請場の見廻りにでかけた。人別書を作っておくようにと、おりつとおゆうに頼んだが、おりつの怒っている顔が、一日じゅう眼について困った。