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ちいさこべ
ちいさこべ
山本 周五郎
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1957(昭和32)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,480 字 · 67 页
と云って泣きだした。茂次は重吉の肩へ手をやり、軽く二三度叩いてやった。
「泣くな、男だろう」と茂次は云った、「悪かったと思ったら二度としなければいいんだ、みんなもそうだぞ、わかったろうな」
子供たちが一斉に頷き、重吉は激しく泣いた。おりつが駆けよって来て、重吉を抱いてやり、重吉は泣きながら、もうしません、ごめんなさいと叫んだ。すると、あっちゃんが市の腕の中で、「ごめんなさい」と云って泣きだしたので、茂次は途方にくれたようにおりつを見た。
「いって下さい」とおりつはめまぜをしながら云った、「すぐに御飯を持っていきます」
茂次は廊下へ出ていった。
夕飯の膳を持って来たとき、おりつは「蜜柑の代を払った」と告げた。徳二郎が受取らないので、ちょうどなくなっていたから蜜柑を二た箱買った。重吉が取ったのは二つだから、おつりがくるくらいだと思う、とおりつは云った。
「その話はよせ」と茂次は乱暴に云った、「それから、今日のことは二度と口にするなって子供たちによく云っといてくれ」
そして箸を取ったが、ふと思いだしたように、彼はおりつを見た。
「あのときおめえなにを云おうとしたんだ」