轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页

青空文庫

隼人は正内老人を眼で捜した。老人は役所の脇に立ってい、隼人はそっちへ歩み寄った。老人は隼人の話を聞くと、それは唖者のいちだろうと云った。親のぶろうが柵の外に来ているが、いちはまえから木戸の誰かを恨んでいるらしく、いつか火をつけてやると云い続けていた。それで木戸が火事になったので、娘を捜したがどこにもいず、いそいでここへ駆けつけて来た、ということであった。

「いちのしたことだとわかれば、どんなお咎めを受けるかわからない、いまのうちに逃げようか、などと申しておりました」

「いや、そんなことはない」と隼人は頭を左右に振った、「娘に恨まれるようなことをした木戸の者にこそ責任はあるが、娘の親を咎めるような筋は決してない、その心配は無用だと伝えて下さい」

死躰が出たら渡すからと云って、老人をぶろうのところへゆかせ、隼人はまた火事場へ引返した。

穀物が焼け残っているかもしれないので、水を掛けるわけにゆかず、火の鎮まるのを待って死躰を捜し出した。隼人はその場にいなかったが、粟の下になっていた死躰は、着物が少し焦げただけなので、いちだということはすぐにわかり、待っていたぶろうと村の者たちに渡した、という報告を聞いた。