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ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页

青空文庫

「私は、私はやはり」と西沢は吃った、「事実を老職へ訴え出て、いさぎよく罪を受けたいと思います」

「それで兄が生き返るか」と隼人が穏やかに云った、「手紙に書いてあったろう、兄がなにより心配していたのは、どうしたら西沢を破滅させないで済むかということだ、それは兄の本心なんだ」

西沢半四郎は眼をぬぐった。

「兄が生き返るならなのって出るがいい」と隼人は続けた、「それができないとすれば、兄の気持を生かすこと、西沢が侍らしい侍に立ち直ることが、ただ一つの、せめてもの償いではないか」と隼人は云った、「――おれはこの木戸でくらす、できることなら一生、流人村のために働くつもりでいる、そうなれば城下で顔を合わせることもないし、西沢も気兼なしにやってゆけるだろう、番が解けるまでの辛抱だ」

西沢はようやく顔をあげた。

「では本当に、――」と西沢は口ごもった、「私はゆるしてもらえるのですか」

「話はもう済んだ」

西沢はうなだれたが、またすぐに顔をあげ、こんどは隼人をまともにみつめて云った、「お願いがあるのですが」

隼人は西沢を見返した。

「私を貴方の側に置いて頂きたいのです」と西沢は云った、「貴方がここにいらっしゃるなら、私もいっしょにここに置いて下さい、貴方からはなれては生きる力がありません、自分でよくわかりません、私は一人ではとうてい