轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちくしょうだに

ちくしょう谷

山本 周五郎

「別冊文藝春秋」1959(昭和34)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 69,788 字 · 138 页

青空文庫

隼人は黙っていた。かれらが疑念を持ったとしても、こちらの責任ではない、といったような顔つきであった。

「そのほうはどう思う」と与田が訊いた。

「私の所存は申上げたとおりです」と隼人は答えた、「ほかに申上げることはございません」

与田は家老を見た。

「では、――」と樋口が云った、「両三日うちに沙汰をしよう」

そして、三月二十二日に再び城へ呼ばれ、正式に木戸番頭に仰せつけられた。隼人は二十五日の早朝、新たに雇った儀平という小者を供に、城下町を出立した。木戸から迎えに来た二人の足軽が案内で、雨妻川の流れに付いたり離れたりしながら、しだいに嶮しくなる山道を、北西に向って登っていった。

木戸のあるのは大仏岳の頂上ちかい岩場だった。麓からは約五里のみちのりであるが、断崖の中腹に危うくしがみついているようなその道は、登り降りが多く、狭くて勾配が急で、馬を通すこともできなかった。また五カ所に桟道があって、そこを「難所」と呼んでいるが、これは崖の岩に穴を穿ち、それへ丸太の支柱を入れた上に、厚い松材の板を渡したもので、百尺あまり下には、雨妻川の上流に当る大仏川の渓流が、大きな岩をめぐって白い飛沫をあげているのが見える。