轻松读懂日语经典作品
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ちゃん
ちゃん
山本 周五郎
「週刊朝日別冊陽春特別読物号」朝日新聞社、1958(昭和33)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,377 字 · 45 页
二
だから長屋の人たちは黙って、知らないふりをしているのであった。
たいていの場合、お直と良吉で、重さんの片はつく。しかし、それでも動かないときには、末の娘のお芳が出て来る。三つになるのに口のおそい子で、ときどき気取って舌っ足らずなことを云う。
「たん」もちろん父の意味である、「へんなって云ってゆでしょ、へんな、たん」
二
重吉のまわりで、冬は足踏みをしていた。
季節はまぎれもなく春に向っていた。霜のおりることも少なくなり、風の肌ざわりもやわらいできた。梅がさかりを過ぎ、沈丁花が咲きはじめた。歩いていると、ほのかに花の匂いがし、その匂いが、梅から沈丁花にかわったこともわかる。――
けれども、そういう移り変りは重吉には縁が遠かった。いま、昏れがたの街を歩いている彼には、かすかな風が骨にしみるほど冷たく、道は凍てているように固く、きびしい寒さの中をゆくように、絶えず胴ぶるいがおそってきた。
灯のつきはじめたその横町の、一軒の家から中年の女が出て来て、火のはいった行燈を軒に掛けた。行燈は小形のしゃれたもので、「お蝶」と女文字で書いてあった。
「あら重さんじゃないの」