轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
――おとうさまはこの方を好いていらっしゃる。
わたくしは笑いながら、心の中でそう呟いた。
――自分もこの方となら一生をともにしてもいい。
縁談はきまり、三月七日に祝言をした。縁談がきまったとき、おかあさまから閨ごとのあらましをうかがった。そのころわたくしは、躯の中に起こるいろいろな感覚に、理由のわからない悩ましさや不安や、苛立たしさを経験するようになっていたので、おかあさまの話を聞きながら、非常な恥ずかしさと同時に、濃い霧がしだいに晴れて、望ましくたのしい景色が見えてくるような、胸の高鳴りを感じたものであった。
祝言の夜、寝所へはいると、あのときの記憶がよみがえったのであろう。おかあさまからうかがって、よく承知していたにもかかわらず、わたくしはまた恐怖におそわれ、躯のふるえを止めることができなかった。
「心配しなくともいい、このまま寝よう」と良人は低い声で囁いた、「――じつは私も、ちょっと怖いんだ」
わたくしは息をひそめた。
「今夜だけはやむを得ないが、明日の晩からは寝所をべつにできるからね」と良人はまた云った、「お互いの気持がとけあうまで、むりなことはしないようにしよう」