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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
四
四
お気にいらないところがあるなら、叱って下されば直すし、一生おそばにいると誓ったこともお忘れではないと思う。どうか二度とそんなことは仰しゃらないで下さい、とわたくしはきつい調子で云った。
「この家にいては」とおかあさまはゆっくり仰しゃった、「玄二郎のことが、あなたの障りになると思うのです、おとうさまもそれを心配していらっしゃるのだけれど」
わたくしは黙っていた。
「でもあなたがそのおつもりなら」と云っておかあさまは太息をつかれた、「――当分この話はしないことに致しましょう」
わたくしはおかあさまの眼をみつめながら頬笑んだ。おかあさまも微笑なすったが、すぐに顔をそむけながら、わたくしに見えないように、そっと眼を押えていらしったようだ。
それからまもなく、わたくしは鼓の稽古を始めた。おとうさまは謡がお好きで、五日にいちどずつ、宝生なにがしという師匠が教えにみえる。お若いころに稽古をし、それから、二十年もやめていたのを、去年からまた出直されたということだが、あまりお上手ではないらしい。師匠もしばしば当惑するようだし、おとうさまも「師匠の鼓はきつすぎてうたいにくい」