轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
五
わたくしは「はい」と答えたが、声にはならなかった。胸いっぱいに温かい湯が満ちあふれるようなあまやかなおもいに包まれ、両手でそっと眼を押えた。
――じつは私も少し怖いんだ。
良人のその言葉を、わたくしは一生忘れることはないだろうと思う。
五
わたくしの眼は正しかった。おとうさまの選択が正しかったというべきだろうが、わたくしは初めて会ったときの、自分の勘に狂いのなかったことを誇りたいと思う。
良人がどんなに好ましい人かということを数えるより、欠点だとみえることをあげるほうが早い。これは初めに感じたことだが、立ち居の動作が、じれったいほどのろい。いまではそれも、おちついたたのもしいものになったが、そのころのわたくしには少しじれったく思えた。次は口数の少ないこと、また、生来おもいやりの深い性分なのだろうが、家士や召使たちにまで気をくばること、などであった。――わたくしが初めての子、松之助を産んでからまもなくのことであるが、小間使のとめが掃除をしていて、おとうさまが大事にしていらしった壺を毀した。唐来の高価な品だそうで、とめは途方にくれて泣きだした。それを良人がみつけたのである。