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やぶからし
やぶからし
山本 周五郎
「週刊朝日増刊」朝日新聞社、1959(昭和34)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,476 字 · 44 页
そのうえわたくしの鼓が加わるのだから、たいてい終りまでうたうということはない、おかあさまはお気の毒だからといって、いつも座をはずすのであった。
二人めのこずえが生れたとき、わたくしは二十五歳、松之助は四歳になっていた。こずえは女のくせに大きな児で、お産はちょっと重かったが、あとの肥立は順調だったし、子供は申し分なく健康であった。
その年の六月、梅雨あけの晴れた日の午後に、わたくしはこずえを宮参りに伴れていった。うぶすなは宇津美八幡で、城下町の北側の小高い丘の上にあった。とめはもう嫁にゆき、小間使はいねという十七歳の娘だったが、陽がつよいので、こずえはわたくしが抱き、いねに日傘をさしかけてもらいながらいった。こずえが重いので、わたくしはすっかり汗になり、参詣をするまえに茶店の奥を借りて、汗を拭かなければならなかった。
茶店とはいっても掛け茶屋でない。座敷が四つ五つもあるし、簡単な酒食もできる。座敷は丘の端に南面していて、斜面の松林のかなたに、城下町の一部がひらけて見える。いねはこずえを抱いて、裏庭へおりてゆき、わたくしは半に水を取ってもらって、肌の汗を拭いた。