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おもいで

ロッパの悲食記

古川 緑波

古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页

青空文庫

カーテンで、やたらに、しきって、お客同士が顔を合わせないようになっている。だから、何処のテーブルに就いても、たちまちカーテンで、しきって呉れる。

そこへ、「おおきに」の声もろとも、祇園の、或いは先斗町の、芸妓や舞妓が、入って来る。

旦那(とは限らないが、つまりは、お客)が、先程からお待兼で、「よう待ってたよ」てなことになる。

つまりは、これ等の洋食屋は、レストランというよりは、花柳界の、色町の、延長と言ってもいいだろう。

だから、こういう店には、ボーイに、古老の如きオッサンが必ずいて、痒いところへ手の届くようなサービスをして呉れる。

此の旦那がいらしったら、祇園の何番へ電話を掛ければいいとか、あの姐さんが来たら、こういう酒を出せばいいとか、万事心得ていて、トントンと運んで呉れる。だから、チップも、はずまなきゃならない。

然しねえ、木屋町の一養軒あたりでさ、川のせせらぎをききながら、一献やりの、海老のコキールか何か食べながら、ねえ、あの妓の来るのを待ってる気持なんてものは、ちょいと又、寄せ鍋をつつきながら、レコを待ってるのとは違って、馬鹿にハイカラでいい心持のもんだ。