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おもいで

ロッパの悲食記

古川 緑波

古川緑波『ロッパの悲食記』。同一底本的分册已合并为一书。收入:想い出、ああ東京は食い倒れ、浅草を食べる、色町洋食、うどんのお化け、甘話休題、牛鍋からすき焼へ、下司味礼賛、神戸、氷屋ぞめき、このたび大阪、清涼飲料、食べたり君よ、駄パンその他、八の字づくし、富士屋ホテル。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 52,651 字 · 114 页

青空文庫

久保田先生とカツレツ

と言ったら、先生は、ワハハハハと、まるで息が切れそうに、何時迄も笑って居られた。

久保田先生とカツレツ

久保田万太郎先生といえば、江戸っ子の代表のようなもの。

食べものなんかも、吃度うるさくて、江戸前の料理ばっかり食べて居られるに違いあるまい。うっかり、先生の前で、豚カツなんか食べようもんなら、何という田舎者だと、叱られるのではあるまいか。

と、僕は、久保田先生の作品から受ける印象でいつもそういう風に考えていた。

その久保田先生と、或る料亭でお目にかかった時、僕は、酒が好きなくせに、江戸前の料理なんてものは、てんで受け付けない性質で、酒の肴に、オムレツか豚カツという大百姓なのだ。鰹や鮪なんていう江戸っ子の食いものは、うっかり食うと、プトマイン中毒を起すという厄介な身体。

だから、その酒席で、僕は、ただ飲むだけにしていた。オムレツが食いたいなんて言ったら忽ち久保田先生に叱られると思ったから――

ところが、宴酣なるに及んで、久保田先生は、もう大分酔って居られたが、「おいおい、ボクに、カツレツとって呉れよ」と仰有るではないか。

おやおや、江戸大通人は、カツレツがお好きなのか? 僕は意外な気がして、吃驚したかおして、