轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
いちにんならじ
一人ならじ
山本 周五郎
「富士」大日本雄辯會講談社、1944(昭和19)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,312 字 · 21 页
大助も少年のころ父に手ほどきをされたが、繕いだけではなく拵えもやってみた。自分の用いてきた具足は二領とも手作りだし、ひとにも二三領作ってやったことがある。舎人助はそれを知っているので、彼が鎧作りを始めたと聞くと、
「それはいいことを思いついた」
と云い、さっそく自分にも一領たのむと申し出た。
ひと月ほど経つと、二人いた郎党のうち若い一人が暇をとって出た。すでに戦場へ出るのぞみの無くなったというべき大助には、それをひきとめる言葉はなかったが、身近な者に去られるさびしさはかなりこたえたようである。するとその明くる日、残ったほうの源八という老人が、ひとりの娘をめみえに伴れてきた。
「これからずっと家のお暮しではどうしても女の手がなくては御不自由でござります、わたくしの姪に当るむすめでお弓と申しますが、下働きにでも使って頂こうと存じまして、……」
そうは云ったが、寂しくなった家のなかに幾らかでも色どりを添え、主人の心を慰めたいという思い遣りがよく感じられた。大助は黙って娘のようすを見まもっていたが、いいとも悪いとも云わなかった。娘は美しい額を伏せて、可憐なほどじっと息をひそめていた。