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いっすんぼうし
一寸法師
江戸川 乱歩
「東京朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月20日<br>「大阪朝日新聞」朝日新聞社、1926(大正15)年12月8日~1927(昭和2)年2月21日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,475 字 · 194 页
疑惑
疑惑
その翌朝、小林紋三は妙にぼんやりした顔をして、山野家の玄関に現れた。彼は一晩中悪夢にうなされ、その夢と昨夜の出来事とが混り合って、どこまでが現実でどこまでが夢だか、よく分らない気持だった。すっかり嘘の様な気もした。
気のせいか、山野の邸は以前とはどこかしら違った感じを与えた。門内の砂利道にゴミが落ちていたり、玄関の敷台に埃がたまっていたり、二階の雨戸が半分しか開いていなかったり、凡ての様子が物さびしく、すさんで見えた。
取次に出た書生の山木も変に蒼ざめた顔をしていた。紋三は山野夫人があのまま又行方不明になっているのではないかと、そればかり気がかりだった。
「奥さんは?」
彼は奥の方をのぞき込む様にして、小さな声で尋ねた。
「いらっしゃいません」
紋三はそれを聞くとギョッとした。
「いつから?」
「エ?」
山木は変な顔をして、紋三を見た。
「昨夜から御帰りがないのだろう」
「いいえ、今し方明智さんの所へお出でなすったばかりです」
「アア、明智さんとこへ」紋三はてれ隠しに口早やにいった。彼は恥しさで真赤になっていた。「じゃ、昨夜は、どっかへお出ましじゃなかったの」