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いちねんのけい

一年の計

佐々木 邦

「面白倶楽部」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,627 字 · 14 页

青空文庫

と巡査も持て余した。

「厄介な野郎だな」

と舌打ちをして、俥屋は片岡君を引き揚げた。片岡君は嚔をしたから死んでいるのではなかった。

「俺はこれで御免蒙りますよ」

と俥屋は逃げようとした。

「まあ待ってくれ、何うにかなるまいか?」

「迚も駄目です。この通り溝泥だらけですから、俥が汚れて明日の商売に差支えます」

「君のところに荷車があるだろう?」

「ありますが、俺も未だ荷車を引くほど落ちぶれない積りです」

「まあ/\、何とかそこのところを都合つけてくれ。この通りもう腰が立たないんだから、打っ棄って置けば凍え死んでしまう」

と巡査が尚お悃願したので、俥屋も到頭納得した。

間もなく荷車が来て、片岡君は扶けられながらそれへ這い上った。

「実に臭いな」

「臭いですよ。お歯黒溝ですからな」

と巡査と俥屋は片岡君のマントの裾で手を拭いた。

「旦那、赤坂は何の辺ですえ?」

と俥屋が行先を確かめたら、旦那さまは懐中から年賀の名刺を出して振り撒くほどに分別がついていた。

「宜しく頼むよ」

と巡査が俥屋に言った。

「済まない」

と片岡君は忽ち荷車の上に起き直った。

「矢っ張り本性違わずだな」

と巡査は先刻からの親切を謝されたと思って嬉しがったが、片岡君は、