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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
投じて、澎湃とよせてくる己が情感に流されるままに、何かしらそこに甘い満足を喫しているふうだった。
おさむらいの娘というものは、こうも手放しで泣くのか――と頭の隅であきれながら、ただまじまじと弥生の涙を見つめていたお艶も、女の涙のわかるのは女である。そのうちに一度、この場にいない栄三郎のことが胸中に閃くと、自分の思いに照らしあわせて弥生のこころがひしとうってくるのを感じて、いつしかお艶も眼のふちをうるませていた。
それは、互いに一人の男を通して、やがてひとつに溶け合おうとする淡い入悟の心もちであった。がそれまでに円くなるには、まだまだ二つの魂が擦れあい打ちあって角々をおとさねばならぬ……よしそのために火を発して、自他ともに焼き滅ぼすことがあろうとも。
長い沈黙である。
と、この時、弥生の泣き声のなかに言葉らしきものが混じっているのに気がついて、お艶は、
「は? なんでございます――?」
ときき返したつもりだったが、じぶんでも驚いたのは、お艶の口を出たのがやはり泣き声のほか何ものでもなかった。
いまにつかみあいではじまるだろうと、おもてに聞いていたお藤、