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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
天地を白く押しつつんで、音もなく降りしきる雪、雪、雪。
どうあってもこの乾雲丸、さっそく左膳の手へ押しつけて、しかる後今宵こそは一騎がけ、必ず腰の武蔵太郎にもの言わせずにはおかぬ!
トットと雪を蹴散らしながら、栄三郎が本所をさして走っていくと、ほかの道を丹下左膳が、お藤の盗んで来た坤竜丸をひっつかんで、これも同じく本所めがけて急いではいるが!
左膳の心もちはおのずから別だった。
目的のために手段をえらばない丹下左膳。
たとえどんな道筋であろうと片割れ坤竜丸が手に入った以上は、一刻も早く椎の根に埋めた乾雲丸を掘り出し、夜泣きの刀を一対として、明け方にははや江戸をあとに、郷藩相馬中村をさして発足しようと意気ごんでいたのだけれど。
丹下左膳、わざわざ鈴川邸の物置まで行って、乾雲丸の掘り返されたのを発見する要はなかった。
というのは……。
舞い狂う吹雪に面をそむけた左膳が、一眼をなかば見開いて左腕に坤竜を握ったまま身体を斜めに法恩寺橋の袂にさしかかった時だった。
片側は御用屋敷の新阪町。
他は清水町の町家ならび――ひとしく大戸をおろして、雪とともに深沈と眠る真夜中。