轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
「ウム、たたたたッたのもしきその一言、タ、大膳亮、チ、近ごろ満足に思うぞ」
――いかに刀剣に対して眼のない溺愛の大膳亮とはいえ、もし彼が、この北境僻邑にすら今その名を轟かせている江戸南町奉行の大岡越前が、敵方蒲生泰軒との親交から坤竜丸の側にそれとなく庇護と便宜をあたえていると知ったなら、大膳亮といえどもその及ばざるを覚り、後難を恐れて、ここらでさっぱりと己が迷妄を断ちきり、悶々のうちにも忘れようとしたことであろうが、このつるぎのふたつ巴に関連して、大岡のおの字も思いよらない大膳亮としては、すでに大の乾雲を手にして、いまはただの小の坤竜にいき悩んでいるのみと聞いては、二剣相ひくと言われているだけに、いま手をひいて諦めることは、かれの集癖の一徹念がどうしても許さなかった。
生命がけでほしいものへ今にも手が届きそうで、そこへ思わぬじゃまがはいったすがた……。
阻まれれば阻まれるほど燃えたつのが男女恋情のつねならば、夜泣きの刀にひた向く相馬大膳亮のこころは、ちょうどそれだったといわねばなるまい。
世の常心をもって測ることのできない、それは羅刹そのものの凝慾地獄であった。