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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
01 乾雲坤竜の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页
、神前にて腹十文字にきり、はらわたをくり出し、悪血をもって神柱をことごとく朱にそめ、悪霊になりて未来永劫、当社の庭を草野となし、野干の栖となすべし――うんぬん。
文禄二年癸巳 九月吉日 土子泥之助……というまことに不気味な強文言。
これがきいて神明おそれをなし霊験ことのほかあらたかだったわけでもあるまいが、両国橋の果し合いでは確かに岩間小熊が勝ったのだけれど、その仕合いの模様にいたっては、群書おのおの千差万別、いま真相をつまびらかにする由もない。しかし、これが当時評判の大事件だったことは疑いなく、奉行のうちに加わって橋詰から目睹していた岩沢右兵衛介という仁の言に、わが近くに高山豊後守なる老士ありしが、この両人を見て、いまだ勝負なき以前、すわ兎角まけたりと二声申されしを不審におもい、のちその言葉をたずねしに、豊後守いいけるは、小熊右に木刀を持ち左手にて頭をなで上げ、いかに兎角と言葉をかくる。兎角、さればと言いて頬ひげをなでたり。これにて高下の印あらわれたり。そのうえ兎角お城に向かいて剣をふる。いかで勝つことを得ん。これ運命の告ぐる前表也と――。
とにかく。