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たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

01 乾雲坤竜の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 340,187 字 · 666 页

青空文庫

その底にそうそうと谷をたどる小流れの音。

いく手に不動山の天害が屏風のごとくにふさぎ、はるかに瞳をめぐらせば、三箱の崎。舟尾の浜さては平潟に打ち寄せる浪がしらまで、白砂青松ことごとく指呼のうち――。

野火のけむりであろう、遠く白いものが烟々として蒼涯を区切っている。

「絶景! 絶景!」

というべきところを、月輪の剣士一同、あゆみをとめて、ジュッケイ! ジュッケイ!

と口ぐちにどなりあっている。

「町人! ここサ来! あの白っこい物アなんだ?」

「エエ……白っこい物と、はて、なんでございましょう――ア! あれは関田へおりる道じゃアございませんか」

「ほうか」

「コンラ町人、江ン戸にはこんな高い所あッか?」

「エヘヘ、まずございますまいな」

「ほうだろう……うおうい!」

先の者がしんがりを呼ぶと、

「なんだア――ア?」

と急ぎのぼってくる。

「中村のお城が見えるぞウイ」

「ほんなら、みんな並んで最後のお別れに拝むこッた。拝むこった」

というので、なるほど、かすかに雲煙をついて見える相馬の城へ向かって、しばし別離のあいさつ……。黙祷よろしくあってまたあるきだすと、

「なあに、ここをかわせばもうじき広野の村へ下りでございます」