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こじきがくせい
乞食学生
「若草」1940(昭和15)年7~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,682 字 · 68 页
「君は跛でもないじゃないか。それに、人間は、水の中にばかり居られるものじゃない。」自分で言いながら、ぞっとした程狂暴な、味気ない言葉であった。毒を以て毒を制するのだ。かまう事は無い、と胸の奥でこっそり自己弁解した。
「嫉妬さ。妬けているんだよ、君は。」少年は下唇をちろと舐めて口早に応じた。「老いぼれのぼんくらは、若い才能に遭うと、いたたまらなくなるものさ。否定し尽すまでは、堪忍できないんだ。ヒステリイを起しちゃうんだから仕様が無い。話があるんなら、話を聞くよ。だらしが無いねえ、君は。僕を、どこかへ引っぱって行こうというのか?」
見ると、彼は、いつのまにやら、ちゃんと下駄をはいている。買って間も無いものらしく、一見したところは私の下駄より、はるかに立派である。私は、なぜだか、ほっとした。救われた気持であった。浅間しい神経ではあるが、私も、やはり、あまりに突飛な服装の人間には、どうしても多少の警戒心を抱いてしまうのである。服装なんか、どうでもいいものだとは、昔から一流詩人の常識になっていて、私自身も、服装に就いては何の趣味も無し、家の者の着せる物を黙って着ていて、人の服装にも、まるで無関心なのであるが、けれども、やはり、それにも程度があって、ズボン一つで、上衣も無し、靴も無しという服装には流石に恐怖せざるを得