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こじきがくせい
乞食学生
「若草」1940(昭和15)年7~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,682 字 · 68 页
葉山氏の家にも、辛抱して行き給え。わびしい時には、下宿で毛布をかぶって勉強するのだ。それが一ばん華やかな青春だ。何くそと固パンかじって勉強し給え。約束するね?」
「わかってるよ。」佐伯は、ひどく赤面しながらも、口だけは達者である。「そんな事を言ってると、君の顔は、まるで、昔のさむらいみたいに見えるね。明治時代だ。古くさいな。」
「士族のお生まれではないでしょうか。」熊本君は、また変な意見を、おずおず言い出した。
私は噴き出したいのを怺えて、
「熊本君、ここに二十円あります。これで、佐伯の制服と制帽と靴を買い戻してやって下さい。」
「要らないよ、そんなもの。」佐伯は、いよいよ顔を真赤にして、小声で言った。
「いや、君にあげるわけじゃないんだ。熊本君の友情を見込んで、一時、おあずけするだけだ。」
「わかりました。」熊本君は、お金を受け取り、眼鏡の奥の小さい眼を精一ぱいに見開いて、直立不動の姿勢で言った。「たしかに、おあずかり致します。他日、佐伯君の学業成った暁には、――」
「いや、それには及びません。」私は、急に、てれくさくて、かなわなくなった。お金など、出さなければよかったと思った。