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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
の生活をして居られた。三十八年の一月二日旅順陥落の報に国中湧き立っていた日、先生は溝淵氏方で屠蘇をよばれ、椎茸を噛んで前歯一枚を折った。『猫』はこの一月から『ホトトギス』に連載された。そして『団栗』はその四月に、同じ『ホトトギス』に出たのである。
『団栗』が書かれたことは、もう思い出の中から、苦いものが消えたことを示すものであろう。そしてこの年の八月に、先生は浜口真澄氏の令嬢寛子と結婚をされた。寛子夫人との生活で、先生は再び幸福をとり戻されたようである。先生が日記をつけられない日には、寛子夫人が時々代って書いて居られる。十一月十六日(寛子記)「今日は貞子母上の五年祭とて心ばかりの祭をなす。」十二月十九日「旦那様昨夜より風邪の御気味にて学校は御休み」と書かれるような奥さんであった。しかしこの奥さんも大正六年、先生四十歳の時に亡くなられた。
「みつ坊」はずっと郷里高知の家で育てられ、大正三年に高知の家が引き払われるまで、ずっと祖父母の手許にいた。女学校に入って初めて父の手に戻った「みつ坊」は、寛子母上の死を送り、先生の吐血から始まる二年間の療養生活を看とり、それから結婚をした。