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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
八 潜熱
八 潜熱
水が凍って氷になる時、一グラムについて八〇カロリーの潜熱を出すというのは、別の説明をすれば、零度の水はそのままではいつまでも氷になれない、一グラムについて八〇カロリーの熱を零度の水から取り去ると、零度の氷になるということである。出す熱量だけ取り去ってやらないと変化は進行しないのである。
大抵の場合、物質に熱を与えれば温度が上り、熱を取り去れば温度が下る。水や氷も同じようにその性質をもっている。しかし水の零度の場合だけは、特別な変化があって、熱は温度を上げるという表向きの作用をせず、固体が液体になるという蔭の作用をする。すなわち潜熱(かげにひそんだ熱)となる。
この潜熱のことは、水を次第に冷やしてゆく場合を考える方が分りよい。たとえば銅板で作った筒の中に一〇〇グラムの水を入れて、寒暖計で測ってみたら、一五度であったとする。この銅の筒を雪と塩との混合物の中にさしこんで冷やすと、水は冷えて寒暖計の目盛りはどんどん下ってゆく。一グラムの水を温度一度だけ変化させる熱量は一カロリーであるから、この場合もし一分間に五度の割合で水温が下るとすれば、その一分間にこの水から五〇〇カロリーの熱が取り去られて、塩と雪との混合物の方へうつったわけである。