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ふたつのじょぶん
二つの
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『二つの』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二つの序文、『団栗』のことなど、詩人への註文、樹氷の科学、救われた稀本、大雪山二題、小さい機縁、天地創造の話、農業物理学夜話、防寒戸、雪は資源である、アメリカの沙漠。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 115,903 字 · 236 页
防寒戸
昭和十四年の夏、といえば、太平洋戦争勃発の二年前のことであるが、私は北海道の冬ごもりに適した家というつもりで、今の家をこしらえた。こしらえたといっても、何も自分で設計をしたというほどではなく、ただ平面図だけ描いて、O君に頼んだのである。
O君は当時は、私立の一小請負業者に過ぎなくて、坪三十円か四十円の借家普請まで引き受けたという程度の建築家であった。しかしそういうしがない業務にたずさわっている間にも、独逸の建築雑誌をつづけて取っているという変り者であった。そういう話を同僚の人からきいたので、一つO君にすっかり任せて家を作って貰うことにした。
四月の初め、平面図だけを渡して、あとは勝手に願いますということにして、私は当時療養中だった伊豆の伊東の温泉へひきこもってしまった。そしてその後のことは、いつ建前があったかも知らないで、放って置いたのであるが、家の方はそれでも無事出来上って、八月末に札幌へ来た時には、もういつでもはいれるようになっていた。
この家のことは、前に『生活の実験』という題で、書いたことがある。それでくわしいことは略するが、簡単に言えば、保温の原理を物理的に忠実に守ったというだけに過ぎない。