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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

と乗り出したが、狼はぱっと横っ跳びに、十二三尺右手へ跳び退いて立ち、矢は地面をかすってからからと遠く外れてしまった。「……無念!」右門作は馬上で思わず呻ったが、もう一度願うという訳にもゆかず、ひっそりと鳴りをひそめている見物の中を悄然と退っていった。

「いや面白いみものであった」安芸守はにやにやしながら、「三人とも腕前はみごとでござるな、しかしなにしろ稀代の兇獣ゆえ、ひと通りではまいらぬのが当然、いや、無理もないところであろうよ」いつも弓の自慢をされてくさっていた光晟、このときとばかり皮肉を云った。光政としても日頃吹聴しているてまえ、そのまま引込んでいるわけにはいかない。

「なになに、いまの三名は馳走披露で、まことの射手はこれからでござる。これ重郎左を呼べ」弓術師範の山川重郎左衛門を呼んで、

「重郎左、あの狼を仕止める射手、申付けてあるであろうな」「……はっ」申付けた者は三人ともしくじっている、重郎左衛門が解し兼ねて見上げる眼へ、光政はしきりにめくばせをしながら、「まことの射手は誰だ、何者だ」「はっ、それは」主君のめくばせで、もう一人誰か出せという意味を察したから、