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びぜんめいきゅうでん

備前名弓伝

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1946(昭和21)年5月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,649 字 · 50 页

青空文庫

門前で八郎左衛門に馬を預け、「入ってはならんぞ」と自分ひとり、つかつかと玄関へ。

「三之丞、三之丞」声の大きい光政、奥までびんびんと響く、すると走せ出でてきたのは三左衛門だった。「あっ、これは」光政と見て仰天した三左衛門、式台下へとび下りて平伏する。光政は急きこんで、

「三之丞は戻ったか」「はっ、立戻りまして今しがた」「出掛けたか」「弓を持ちまして馬にて」「矢は一筋だな」「御意にございます」「いかん」すぐに引返そうとする。三左衛門が、

「お上、いずれへ在します」「三之丞が心許ない、ゆえあって彼に幸之進の討手を命じた。うかと許したが、彼は先日の負をも取返すつもりだ。幸之進は心柄こそ未熟なれ剣はするどい、矢一筋で立向っては三之丞が危ないのだ」「それなれば三左衛門追いまする、お上にはまず」立とうとした時、玄関脇で、「恐れながら」という声がした。思いもかけぬところから声がしたので、驚いて光政が振返ると、庭との仕切りになっている柴折戸の際に、若い娘が一人土下座で平伏していた。……三左衛門が見ると娘のなつだから、

「無礼者、御前だぞ、退れ」「待て三左衛門、なに者だ」