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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
「ええ。馬どころではありません。夜になると狐がコンコン啼きますよ」
「まあ」
と彼女は初めて笑った。きれいな歯なみだった。
それから二言、三言話したが、召使の女はついでに本堂にお参り致しましょうと言って、鶴子と円亭を出た。一緒について行くわけにも行かなかった。
しかしそれとなく後から行って、獅子の背に乗っかったり、鐘を鳴らしたりして、彼女たちと附かず、はなれぬような風にしたが、鶴子の方でも終始私を意識している気がした。
それから毎日つづけて私は千光寺へ登った。どうも彼女が来るような気がして。しかし五、六日目に本当に彼女は来た。しかも今度は一人で、雨あがりの若葉の路を蛇の目傘を持って。私は不思議な気がした。
私たちは会釈して互いに近づき、申し合わしたように、この前の円亭の方へ並んで歩いた。
私たちは何のために来たものか問おうともせず、並んで腰かけていた。楓の若葉はまだ雨に濡れていた。
「時々ここへいらっしゃるの?」
「ええ。時々」
二人は別に話す事と言ってはなかった。しかしそんな事はどうでもよかった。
そのころ児島丸という美しい連絡船が尾道と多度津との間を往復していたが、その船がちょうど目の下の海を通ったので、私は自ずと琴平詣りのことを連想した。