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ひかりあういのち
光り合ういのち
倉田 百三
「いのち」1937(昭和12)年2月号から連載
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,439 字 · 263 页
私のクラスに朝日という少年がおり、これを小泉家の親戚で奇寓していた。
私が三年のころ、時子は広島の女学校を卒業して家に帰っていた。小泉家の前を通って私は毎日通学するのであったが、格子窓の中からよく琴の音が聞えていた。時子が弾くのであった。
小泉先生は一年間私の主任の先生であったが、この極く若い先生も私を愛して下さって、家へ帰って時子たちに私の事をよく話されたそうだ。私の作文を読んで聞かしたりして、そうした事からローマンスの種が蒔かれた。
私は朝日君につれられて、小泉家に遊びに行くようになった。この家庭は奉公人に到る迄長者の家の僕婢らしいおっとりした所があった。私はこの家庭の人々を愛せずにおられなかった。同じような善良な家庭に育った坊ちゃん坊ちゃんした私と、やはり女学校を首席で出た学芸の好きな時子とが牽かれあうのは自然であった。カルタをとれば二人とも一番強かったし、小説の話をすれば同じようによく知っているし、それに家で姉たちの琴をよく聞いて知っていたので、彼女の得意の琴に理解が通った。
彼の女はしかし非常につつましく、その表現は古風であった。私たちは他人の前で愛の表情をするようなことはなかった。