轻松读懂日语经典作品
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いりえのほとり
入江のほとり
正宗 白鳥
「太陽」1915(大正4)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,430 字 · 50 页
「そりゃ惜いね。学校へ寄附しとけば植物学の教授に役に立つのだろう」
「名が分らんから教える時には役に立ちません。私にだけにしか誰にも分らんでしょう」辰男は雑草でも木の葉でも手あたりしだいに採集して、でたらめな名前をつけていたのだった。
「それで満足できるかね。世間で極めた名前を知らずに集めてばかりいても楽みになるのかい」
「へえ。あの時分は楽みにしとったんでしょう」
今夜はなぜだか珍らしくテキパキと話すのを聞いていると、栄一は弟の辰男を、永年家族が極めているような低能児とも変人とも思われない気がした。が、顔を見ると、光のない鈍い眼、小鼻の広い平たい鼻、硬そうな黒い皮膚がどうしても愚かものらしく彼れを見させた。他人から慈愛を寄せられそうな潤みや光は、身体のどこにも持っていない。
「何か望みや不平があるのなら明ら様に言ったらいいじゃないか。おれが立つ前に聞いといたら、多少お前のためになるようなことがあるかもしれないぜ」と、栄一は優しく訊いて弟の心の底を索ろうとしたが、
「そんなことは他人に言うたってしかたがありません」と、辰男は冷かに答えた。押返して訊いても執念く口を噤んで、よそ目には意地悪く見えるような表情を口端に漂わせた。