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ふゆがれ

冬枯れ

徳永 直

「中央公論」1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页

青空文庫

口の重い、どっか己れまで棄てきったようなもともとの性格が、ヒヤリとするほど鋒鋩をあらわしている。

「君もやられたというじゃないか?」

「うふん……」

ツマらないという風に苦笑して、あとは黙ってしまう。鷲尾が様子をきいても、「さァ」とか「ウン」とかいうだけで、すぐ将棋の本と一緒にうしろへヒックリかえるのだった。

「景気はどうだい?」

「ようなか……」

店先にはスリッパがひっくりかえっていて、古い型の塗の剥げた鏡が、曇ったように鈍く光っていた。体格のいい、在の人らしい妻君がお茶をもってくると、Fはゴロリと起きあがりながら、眠そうな眼を二つ三つまたたくと、突然他人事のように云った。

「Oは国家社会主義になったげなばい」

「Oが※(疑問符感嘆符、1-8-77)」

鷲尾が驚いて相手をみると、Fはワッハハと笑い出した。

「こないだ○○町で逢うたらば、ホラ侠客の『○○天山』の新聞で働いとるげなてち――、その言うこつがええたい、こんどはぬしどんが四の五の言うなら叩ッ斬ってしまうちゅうけんな、おッそろしか――」

Fは止め度なくゲラゲラ笑いしながら、そのとき店先に客の顔がのぞくと、渋々と身体を起しかけた。