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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
七
――
七
上の男の子が退院すると、すぐ鷲尾一家は東京へ出発した。混んでいる三等車の片隅に女房や子供達を腰掛させると鷲尾は殆ど立ちッ通しだった。まだ予後が充分でない男の子は、大儀そうに痩せた脛を腰掛からブラさげていた。
「じゃお壮健で……、アバヨ、アバヨだ」
荷物を車内まで担ぎこんでくれたりした虎吉は、汽車が動き出すまで、円い笑顔を窓口から覗かして子供達とフザけていた。父親は少し離れたところで、ボンヤリたっていた。
「おとっつぁン、じゃ……」
鷲尾が首をのぞかすと、「ハ、ハイ」と慌てたように一二歩前へ出てきて、キョトンと見つめた……鷲尾は一寸言葉がめっからなかった。恐らくはこんなにヒドく呆けた父親ともこれが最後の別れであろうと思ったが、べつに悲しいなどという気も起らなかった。鷲尾も間の悪そうな眼をまたたかせ、父親はポカンと口を開けたままで、汽車は動き出したのだった――。
九州線の折尾駅あたりではもう暗くなった。日暮れ頃には必ずむずがり始める子供達を叱りつけながら、四番めを妊娠している女房は、汽車酔が出たのか青い顔して、三番めの子に乳をふくませていた。
「のんきに書くよ、子供も育てるさ――」