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ふゆがれ
冬枯れ
徳永 直
「中央公論」1934(昭和9)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,850 字 · 48 页
六
あがってゆく後姿が見えた。――
番傘を借りて出たが、もう霙はやんでいて、凍りついた地べたに霰が仄白く残っていた。裏通に出て田圃道を近道しながら、娘はきっとあのまま泣き崩れているに違いないなどと考えた。
県道筋に沿うたまばらな人家には点々と灯がみえ始めて、もう足許も暗かった。野づら一めんを轟轟と唸っている風をまともに浴びると、呼吸が塞りそうだった。暗灰色の夕空、濃い闇につつまれてゆく野ッ原――、何もかも窒息させられてしまい、この凄惨な景色のどこに「春」が潜んでいるなどと考えられようか※(疑問符感嘆符、1-8-77)
鷲尾は急に東京へ帰りたくなった。もう呼吸が塞りそうで、たった一ン日もいたたまらない気がしだしたのだった。
六
――まったく、つむじ風に揉まれている木葉のような気がした。片足でケンケンしているような危なッかしさに、自分自身に腹たてながら、その癖、昨日たてたプランも今日は跡方もなく見失ってしまう。あたふたと東京から逃げ戻ってきて、いまはまた時計の振子のように、何の解決もアテもなく舞い戻ってゆく気持だった。
亡母の一周忌も半月繰上げて、ホンの型だけ済ませ、ガラクタな手荷物などを纏めたが、出発の前日になって上の男の子が猩紅熱に罹ってしまった。