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こごえるおんな

凍える女

小川 未明

「三田文學」1912(明治45)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页

青空文庫

五

児の手は、赤くなって人参のように腫れ上っていた。母親の胸には、青い筋が現われて、一枚の鉄板のように冷たかった。この下に熱い血液が流れて、滋養分のある乳の出るということが不思議に考えられた。

おあいは、まだ乳の飲み足りないで泣きつづけている児を再び抱き直して、背の中に入れた。而して、赤い花模様のついている帯を締めて身仕度をした。児の頭ばかり出して、黒い合羽を被ると、再び急いで野中の細道を走って、街道の方へと行った。遠くには、町の家根が見えた。その彼方には、高い国境の山々が連って見えた。淋しい細い道は無限に何処へともなく走っている。

午後の、雲の往来する、風の吹く、暗い空は益々曇って来た。

五

栗の木の下に立って、令一は手に長い竿を持って、管笛を吹きながら、小鳥を呼んでいた。その笛の音は、風に消されて、折々聞えたり聞えなくなったりした。そのたびに雨のように、ぱらぱらと大きな木の枝から、枯葉が吹き捲くられて、下に、散っている葉は、からからと音を立ててあたりを駈け巡った。

「えらく、暴れてくるだ。」……と空を見ながら、家の前を通る人がいって過ぎた。

沖の方は、墨を摺ったように暗くなった。