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こごえるおんな
凍える女
小川 未明
「三田文學」1912(明治45)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页
三
或時は「そんなに沢山はやられないからこれだけ持って行ってくれい。」といって少しばかりしか借してくれなかったこともあった。こういう風で、叔母は死ぬ時まで、あまり人の世話にならなかった。それで、心は親切な人で、憐れに思う時は、自分の出来るだけの親切は、蔭になってしたものである。しかし何事でも表に立ってするというようなことは好まなかった。
叔母は七十で死んだ。死ぬ前々日まで、自分の身のまわりのことは自分の手一つでした。死ぬ前の日になってから、おあいに向って、「私も、もう長くはないと思う。この家と、少しばかりの金をお前に遺して行く。」とただこういって目を瞑ってしまった。流石に、勝気なおあいも、この日は心から泣いて、死んでしまった叔母を今更ながら懐しく、悲しく思って泣いた。
三
金は、幾何も残っていなかった。おあいは、葬式を済して、仏事を奇麗に営んだ。せめて、これが亡き叔母に対して尽すべきつとめであるように思った。
叔母の死後一年と経たぬうちに、僅かばかりの金も借金を払ったり、やるべき処にやったりするとだんだん少なくなってしまった。而して、ついに叔母の家も売らなければならなくなった。