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こごえるおんな

凍える女

小川 未明

「三田文學」1912(明治45)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页

青空文庫

六

炬燵に当っていても背のあたりがぞくぞくと刺すように寒さが迫って来た。

「まだ、うす明るいのう……。」

「雪が降ったからだ。……雪明りだ。もういつもなら真暗なのだ。……」

と婆さんが窓の方を見ながらいった。

「雪明りというものは、気味の悪いものだのう……。」

と十六にもなって鼻を垂らしている令一は、言って、まだ、管笛を手から放さずに握っていた。しかし、もうそれを口に当て、窓際で彼方の森の方に向って吹いて見る気にもなれなかった。

寂寥と、夜とが、地の上に襲って来た。而して、雪は積って、寒さは益々加わった。

六

風の叫びは、野の末に遠く聞えた。夜は、いつしか吹雪の中に更けてしまった。

豆ランプの心を細くして、枕についた老婆は、足の冷えるので容易に眠りに陥らなかった。まごまごしているうちに、夜中近くとなったらしかった。ごとごとと、戸に打ち当る吹雪の音に、まぎらされて、最初の一声は聞えなかったが、二たび、

「今晩は……。」という、小さな声にハッと老婆は胸に轟いた。

つづいて、はげしいザーという吹雪が、烟出し窓の障子に当って小さな声は消されてしまった。その後は、暫らく死のような沈黙が来た。