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こごえるおんな

凍える女

小川 未明

「三田文學」1912(明治45)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,949 字 · 20 页

青空文庫

婆さんは、外に出ている下駄や、桶などを取り入れて、薪を割っていた爺さんに向って、おあいさんは、もう、来なさらないと見える。森の家から、何処へも寄らずに帰ってしまったらしい……と話していた。其処へ、ぼんやりとして令一が竿を引き摺りながら帰って来て、おあいの、もう田圃道から帰ってしまったことを告げた。

老婆は、喜ばしそうな顔をして、この寒い時分に泊られるようなことがあると困ったのが、それは都合がよかったというようなことをいって、気の休まる風が見えた。爺さんは、あの勝気の人のことだから、よもやみすぼらしい風をして来はしまいと思ったが、それとも博打に勝って帰ったろうかなどといっていた。三人のものは家に入ってしまった。

戸外では、ひゅうひゅうと鞭を振るように鋭い風の、梢に当る音が聞えた。それに混って、ぱらぱらと障子窓に当るものの音がした。令一は、起って窓を開くと、

「霰だ、霰が降って来た。」と大きな声でいって、喜んで小躍りした。而して、直様戸外に駆け出して、霰だ。霰だ。といって走っていた。霰は、令一の衣物の上に当って、ころころと袂を振うたびに散ってしまった。